笹島喜平の木版画
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笹島喜平 [ささじま・きへい] (1906〜1993)
Kihei Sasajima
平塚運一、棟方志功と並び称される黒白木版画の巨匠。棟方志功の最初の弟子であったが表現主義的な志向から次第に写実による一点一刻もおろそかにしない厳格で構成的な古典主義の方向に向かう。拓刷木版という独自の技法を創案して新分野を開拓した。雪舟の水墨画や鎌倉期の仏像彫刻にみられるような写実的で簡素質朴な力強い画風は日本人のある面での美意識と伝統を具現している。晩年の主題は不動明王を主とする仏像、古都の風景、霊峯富士、女神像など日本的象徴に限られていた。
1967年、作家が還暦で私が26歳の時から交流が始まり、次第に厳しい制作姿勢と画業に尊崇の念が高まり、人生の師と仰ぐようになった。このコレクションは1972年に個展を開催させていただき、以来、少しづつ収集し、郷里益子に帰郷されてから、3カ月に一度ぐらいアトリエを訪ねて作家自身から直接作品が手渡された。
古都風景
「古都風景」
古都風景
拓刷りの手法を手がけて2年目、昭和35年の春、(小石川の椿山荘の)三重塔を主題にして、古塔A,B,Cの三点を版化したが、その中の古塔Bの作画の時である。相変わらぬ一点一劃の操作に苦悶苦闘、やっと仕上げた拓版の画面を見ているうちに、目がしらが熱くなって、涙が溢れてしまったのである。五十年来私の作画中たった一度の経験で、忘れ得ぬ感激の一駒である。 そしてこの古塔図は、第六回の高島屋個展に出陳したのであるが、会期中毎日毎日見つづけているうちに、奈良、京都の古塔風景が、しきりに目の裏に浮かんできたのであった。まさしく美神の招きをうけたのである。個展の後始末もそこそこに奈良行きをしたのであった。爾来、奈良、京都への写生行は現在までつづいて、私の版化の対象となっているのである。(喜寿記念「笹島喜平展」カタログより)
◎ これらの作品は2006年10月に東京の或る個人コレクションに収蔵されました。