笹島喜平木版画 「富士」
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富士
富士を主題にしたものは1958年頃の平刷りからはじまっているが、本格的に取り組んだのが1972年府中の四谷に移住してからである。その時の心境を次のように記している。「…… それにしてもまして私をよろこばしてくれるのは、すぐ近くに広くひらけた多摩川原があり、つづいて多摩丘陵丹沢山系、時々に仰ぎ望むことができる富士山の偉容である。……四季それぞれに無限の変容を現してくれる。なんといっても眺めが大きくて、悠遠を感じさせてくれる。その景観の中に日本一の名山富士が姿を現す。晴れた日それも秋の終わりから春の初めにかけて、かぎられた時であるが、なんとすばらしい好景を展開してくれることか。私は思わず嘆息をもらし、胸をおどらせる。何かしら散歩の足どりも元気づいて来る。茜空にきらめく太陽、真紅にそまって富士の背後に、すうっと没する太陽、やがて青ぐろく悠然と構えた富士も静かに夕暗の中にすいこまれる。富士は昨日も明日も天候の如何にかかわらず、まぎれもなく丘陵の彼方に屹立している。」(『Print Art』20号より)
◎ これらの作品は2006年10月に東京の或る個人コレクションに収蔵されました。