木版 16×25p 1963年作
清宮質文
さまよう蝶(何処へ−夢の中)
魚津章夫
清宮質文の木版画はほとんど小画面である。小画面の版画は大画面の絵画に匹敵するという信念をもって制作した。版木は桂を使う。わずかの刀の痕跡で形がつくられ、摺りはほとんど他人に任せたことはない。版木に絵の具を塗る段階から、刷毛目が紙にうまく出るように刷毛の使い方も考慮する。幾種類ものバレンを使い分けて繊細な感性で摺り重ね、それが時には何十版にもなるという。この絵に現れている蝶はほかのいくつもの作品に度々登場してくる。蝶は自由や夢や希望を求める作者の分身なのだろう。無限の彼方にただよう孤独な詩魂が謳われている。
(『現代版画の黄金時代』展覧会カタログに収録・朝日町立ふるさと美術館 2001年)