版画友の会
「版画友の会」というのは昭和32年(1957年)に美術出版社の社主大下正男の熱意によって、設立された版画同好会である。昭和32年と言えば東京国際版画ビエンナーレ展が開催された年で、当時もっとも内外の版画事情に精通されていた久保貞次郎と今泉篤男を顧問にすえて組織された。最初は年に数回の展覧会や作品の頒布会が行われていた。しかし、担当者の田中邦三さんのねばり強い情熱によって、地道に続けられ、昭和36年には会員数も約200名になったので、会員のための機関誌として会報『版画』が刊行された。創刊号は池田満寿夫のオリジナル作品で飾り、年1回、8号まで続刊されたが、昭和43年に市販の版画専門誌『季刊版画』として、内容を充実させて新たな装いで発行された。また、新宿京王百貨店の開店まもなく版画専門ギャラリー「版画サロン」が開設され、作品の納入や展覧会企画のすべては版画友の会が協力していた。主に企画主催した展覧会としては戦後20年「現代日本版画展」、ヴェネツィア・ビエンナーレ グランプリ受賞記念「池田満寿夫銅版画展」、「池田満寿夫ミニァチュール全作品展」、「長谷川潔銅版画展」などがある。
1960年代から70年代にかけての版画ブームは東京国際版画ビエンナーレ展の開催と相俟って版画ジャーナリズムの形成や市場形成などに先駆的な役割を果たした。
機関誌『版画』の表紙
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